アメリカ、ディープサウスの小さな町。ここでは変化は永遠に訪れそうにない。ところがある日、蛇革のジャケットを着た若い男ヴァル・ゼイヴィアがギターを手に町へ流れ着くと、人々の満たされぬ欲望が炎となって渦巻く。なかでも情熱をかき立てられたのは、長年愛のない夫婦生活を続けてきたレイディ・トーランス。ヴァルとレイディが手にした愛と自由は、昔ながらの偏見と差別に満ちた町では大きな代償をともなうものだった。
『地獄のオルフェウス』・・劇場の詩人と呼ばれ、世界中の演劇人に影響を与えた20世紀を代表する劇作家の一人、テネシー・ウィリアムズの作品は現在も世界各国の劇場で上演され続けている。商業的作品のデビューとなる『天使のたたかい』(ボストン・ウィルバー劇場1940年初演)を、その後書き直しを続けギリシャ神話の死んだ妻ユリディスを慕い続け、彼女を救おうと死の世界に降りたオルフェウスをタイトルに1957年ブロードウェイ、マーティン・ベック劇場で『地獄のオルフェウス』として世界初演され1960年、作者自身の脚本で映画化『逃亡者』(邦題『蛇皮の服を着た男』)、アンナ・マニャーニ、マーロン・ブランド主演。